「塾に行くこと」そのものに反発していた、中学3年生のHさん。
最初は、お母さまに言われて、渋々のスタートでした。
「まずは週1回だけでも……」
お母さまも、そんな思いでHさんを送り出してくださったそうです。
初めて来塾したときには、少し反抗的な態度が見られる場面もありました。
だからこそ、最初から「もっと勉強しよう」
「受験生なんだから頑張ろう」と一方的に求めるのではなく、まずはHさん自身の話を聞くことから始めました。
今の学校での学習状況はどうなのか。
何か困っていることはないのか。これからどうしたいと思っているのか。
話を聞いていくと、Hさんから出てきたのは、
「数学と国語に不安を感じている」
という言葉でした。
そこで、Hさん自身の希望も取り入れながら、週2回からスタートすることになりました。
お母さまは、
「本当に決めた日時に通ってくれるのかな……」
と、内心ハラハラしていたそうです。
ところが、いざ始まってみると、Hさんは決めた日時にきちんと来塾。
少しずつ通塾にも慣れ、宿題に取り組む流れもできてきました。
さらに、学年の違う同じ部活動のお友達との関わりも良い刺激になったのでしょう。
いつの間にか、Hさんは
とても楽しそうに塾へ通ってくれるようになりました。
そして、ここからさらに大きな変化が始まりました。
それまで、家ではほとんど勉強をしていなかったHさん。
塾での学習が進むにつれて、
「学校の授業より先に進みたいから、授業を増やしたい」
「学校の授業がわかるようになってきた」
と、前向きな言葉が増えてきたのです。
「塾に行かされている」という状態から、
「もっと勉強したい」
という気持ちへ。
これは、私たちにとっても、とても嬉しい変化でした。
夏期講習では5教科38回に挑戦
そんなHさんは、夏期講習では5教科合わせて38回の学習に取り組みました。
これまであまり勉強してこなかった科目にも、一生懸命向き合いました。
そして8月からは、なんと週4回の通塾へ。
最初の頃の姿を知っているからこそ、この変化には大きな成長を感じています。
もちろん、Hさんが変わったのは、ただ「授業回数を増やしたから」ではありません。
一人ひとりの生徒について、今どこに課題があるのかを見つけ、
個人カルテに記録しながら、その時々に必
要なことを考えて提案しています。
そして、それと同じくらい大切にしているのが、
「できていることを認めること」
「頑張っていることを伝えること」
「もう一歩進めるように励ますこと」
です。
「数学が苦手」だと思っていたHさん
例えば、Hさんの数学。
一見すると「数学が苦手なのかな?」と思う場面もありました。
しかし、学習の様子をよく見ていくと、
実は数学そのものが苦手なのではありませんでした。
文字の表記によるミスが多かったり、
途中式を書くことを「面倒だから」と省いてしまったり。
そのため、本当は解ける問題まで不正解になってしまっていたのです。
そこで、
「もっと勉強しよう」
と量を増やすだけではなく、
「途中式を丁寧に書く」
「文字を正確に書く」
という、Hさんに必要な具体的な課題を伝えました。
すると、少しずつミスが減り、正解できる問題が増えてきました。
これは、子どもの現状を丁寧に見ていなければ、
なかなか見つけられない部分です。
管理するのではなく、伴走する
塾では、生徒一人ひとりの学習状況や様子を「個人カルテ」に記録しています。
でも、このカルテは、子どもを管理するためのものではありません。
「この子には、今、何が必要なのか」
「どう声をかければ、一歩踏み出せるのか」
「次にどんなことを提案すれば、自分から動けるのか」
を考えるためのものです。
もちろん、何をやるべきかを具体的に提案することは大切です。
でも、それだけでは十分ではありません。
最終的に目指したいのは、
「先生に言われたからやる」ではなく、
「自分に必要だからやってみよう」と思えること。
子ども自身が課題に気づき、自分の意志で向き合えるようになることです。
Hさんの「塾に行きたくない」から「もっと授業を増やしたい」への変化。
それは、勉強だけの変化ではありません。
自分にもできる。
やってみよう。
もっとわかるようになりたい。
そんな気持ちが少しずつ育ってきたことが、何より嬉しいのです。
これからも一人ひとりの「今」を丁寧に見つめ、対話を重ねながら、その子に必要な一歩を一緒に考えてい
きたいと思います。
管理するのではなく、伴走する。
そして、子ども自身が「自分から動き出す」瞬間を、見逃さずに支えていきます。

